賃貸の契約金、申込や審査直後にお金を払ってほしいと言われ疑問を感じていませんか?
部屋は気に入っているのに入金を迫られ不快な思い、不審感を抱いていませんか?
今回は賃貸の契約金に焦点をあて、入金のタイミングやキャンセル時の返金等について解説します。
あなたの悩み、疑問
- 申込をするのに、申込金が必要と言われた
- 入金をしないと、申込を受けられないと言われた
- 審査中に、お金を払うよう言われた
- 重要事項説明の前に、お金を払うよう言われた
- 契約書をもらっていないのに、お金だけ払うよう言われた
- 部屋は気に入ったのに、納得がいかない
- 入金後キャンセルをしたら、返金できないと言われた
この記事の見解
結論から言うと、重要事項説明前の契約金支払いは宅建業法に違反します。
実は入金に関する悩みを抱えている方は多く、賃貸の取引において不信感を生じさせるポイントの一つです。
理由は様々ですが、一番の要因は説明不足。
賃貸借契約は約束事が多岐にわたる為、伝達漏れや行き違いなどが生じます。
担当者の業務量、能力、性格、相性等、自分勝手な言動に不信感を抱いてしまう場合もあります。
商品の説明が不十分、納得していない状況での支払いはNG。
きちんと商品の説明を受け、契約内容を理解し、納得してからお金を払いましょう。
結論
自己紹介
mai
賃貸一筋20年の宅地建物取引士。
賃貸業務一連の実務経験有り。
現在は年間約200本の賃貸借契約がメイン。
「満足度の高い取引の達成」を目指しましょう。
当サイトはコンプライアンスを重視します。
常識から逸脱する行為は、事例として紹介することはありますが推奨はできません。
筆者の経験から派生した主観が含まれます。
ご意見ご質問等お気軽にコメントください。
この記事で得られる賃貸情報
- 動向と実情の把握
- 知識と知恵の習得
- 疑問と不安の解消
- 判断、対応力向上
言葉の意味
まずは各用語の意味を整理しましょう。
契約金は必ず支払う必要があります。

手付金、申込金(内金)、預り金は法的に支払い義務はありません。
契約金以外を払っても審査が通過するとは限らず、必ず契約できるわけではありません。
契約金以外は申込や契約のハードルを上げ、本当に契約する意思があるか確認やキャンセル抑制の目的で利用されています。

手付金は賃貸で認められておらず、売買の取引において授受される金銭です。
重要事項説明は略して「重説」とも呼びます。
仲介業者は仲介手数料以外の金銭は報酬として受領できません。
火災保険や鍵交換、消火器等の付帯商品は消費者からの依頼があれば受注することができます。
契約金という言葉はこれら全て(全額)の総称として使用されています。
賃貸借契約の流れ
ここで契約の流れをおさらいしましょう。
上記のとおり、契約金の入金は重要事項説明を受けた後、となります。
契約は契約書に署名捺印を行い、入金すると成立します。
家電の購入に例えてみる
賃貸契約を家電購入の例に置き換えてみます。
※申込書はありません。意思表示のみ。
※代金を支払うと自動で契約成立、契約書はありません
このように皆さんは日常的に「契約」を行っています。
コンビニでおにぎりを買うのも契約です。
契約は口約束でも成立します。


賃貸借契約は複雑なので書面にし、トラブルを予防します。
そしてSTEP.6のとおり、契約と入金は同時履行が原則。
「入金=契約成立」が取引の基本といえます。
重要事項説明前の入金は業法違反
一般的には審査通過後は
契約日を決め、
契約日に不動産屋へ行き、
重要事項説明を受け、
そのまま契約(署名捺印)を締結し、
そのまま契約金を払う。
という流れとなります。


入金だけ後日ということもあります。
コンビニなどと違い賃貸借契約の場合、お金を払う前に入居審査と重要事項説明が立ちはだかります。
入居審査は家賃が払えるかの判断として必要。
重要事項説明は宅地建物取引業法で「契約が成立する前の説明」が義務付けられています。
宅地建物取引業法 第三十五条
宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明をさせなければならない。
つまり契約前の入金(=契約)は宅建業法に違反する行為といえます。

家電と違い申込時に契約ができない仕組みなのです。
審査は数日かかる場合があり、重要事項説明の日程調整にも時間がかかります。
本来のあり方をうやむやにされ、何の説明もないまま(詳細が分からない状態)入金を迫られるのです。
入金を迫る理由 4選
不動産屋が入金を迫る理由の多くは以下のとおりです。
一番はキャンセルをされたくないということでしょう。
キャンセルをされると、内見や見積、申込や審査等、費やした時間が全て無駄になります。
入金があればキャンセルはできない、というわけではありません。
とにかく入金をさせ少しでも契約を前進させておきたい。
キャンセルをしにくい状況にしておきたい。
ということです。
不動産屋には売上目標や営業成績が少なからず存在します。
月末〆の不動産屋が多く、目標の数字に届いていない場合があります。
この場合、とにかく今月中に入金してほしい、という自分勝手な言動が飛び出します。

入居日が近い場合、入金を急ぐ必要があります。
責任をもって引き渡しを履行する為です。
引き渡しの準備は契約と平行して進めますが、鍵交換や虫駆除等、入金があるまで実施しない項目があります。
入居が近い場合、引越しに間に合わせる為に、入金を急かされる場合があります。
大家さんや、不動産屋には独自のルールや慣習として残っているフローがあります。
賃貸業界は貸し手市場といわれた時代があります。
当時部屋を借りたい人は、不動産に言われるがまま契約をするしかありませんでした。
中には「入金が先」が当たり前という不動産屋もあり、このようなフローが慣習として残っている可能性があります。
入金を断るとどうなる?
宅建業法違反を理由に、入金を断るとどうなるでしょう。
契約を断られてしまう場合があります。

冒頭申し上げたとおり、前提として契約は当事者の合意がないと成立しません。
貸主側の主張としては
- 入金が嫌なら契約をしなければ良い
- 細かいことを気にする方には入居してほしくない
- 入居後も何かとクレームを言ってくるのではないか
- 他にも借りたい人はいる
単に折り合いがつかなかっただけ、として契約は見送られます。
矛盾するようですが貸主が条件を提示している以上、これを受け入れる必要があるのです。
解決策は入金日・重説日の交渉
貸主や不動産屋に言われるがまま契約することは、おすすめできません。
とにかく重要事項説明を受けましょう。
そして日程の交渉(相談)してみましょう。
相談内容は「入金日の変更」か「重説日程の変更」です。
まずは入金日を重要事項説明の後に変更できないか、もう一度相談しましょう。
入金日の変更ができない場合は、重要事項説明の日程を入金前に前倒ししてもらいましょう。

不動産屋のフローにないかもしれませんが、審査前であっても重要事項説明は受けられます。

重要事項説明書の作成に時間がかかる場合はあります。
重要事項説明の前倒しは、あなたの時間を割きスケジュールも変更する必要もあります。
よってお互い大変な思いをする可能性はあります。
しかし気に入った部屋との出会いは貴重、時間を割いてでも前倒しの価値はあると言えます。
また、この相談を受けてくれるかどうかは仲介業者次第。
どちらも断られるかもしれませんし、例外として何とか調整をつけてくれるかもしれません。
これを調整しまとめ上げるのが仲介業者の役割であり、不動産取引なのです。

調整事項や説明が不要な取引は、ホテル予約のようにネットで完結できてしまいます。
ちなみに交渉は喧嘩ではありません。
感情的にならず冷静に交渉を進めましょう。
キャンセル時は返金されない場合がある
契約金の返金はされない場合があります。
貸主や不動産屋の意向、契約内容、用途、キャンセルのタイミングにより異なります。
目安の考え方は下記のとおりです。
- 契約成立前は返金される、契約成立後は返金されない
- 契約金は返金されない、預り金は返金される
- 作業前はされる、作業後は返金されない
返金の取り決めがない不動産屋もあります。
契約解除にあたり、返金の請求はすべきと考えます。
また契約開始日以降はキャンセルではなく、解約となります。
この場合、解約の条文が適用となり返金の概念自体ありません。
まとめ
賃貸借契約の取引は頻繁に行うものではありません。
分からないことが多く、不安な思いをされることもあると思います。
不安な思いは担当者の説明不足に起因します。
分からないことは何でも質問し、最低限の説明を受け(重説)納得してからお金を払いましょう。